大人の外来

高血圧

血圧って何?

血圧とは、心臓から送られた血液が血管(動脈)の壁を押す力のことです。
血圧は「心臓が血液を押し出す力(心拍出量)×血管の抵抗(末梢血管抵抗)」で決まり、そのほかに腎臓・内分泌(ホルモン)・神経系など様々な因子で調整をされます。
血圧は常に変動していて、普通は起床とともに上昇し、日中〜夕方に高くなり、夜に低くなります。また、一年を通して夏は低く冬は高くなる傾向があります。
高血圧症とは、繰り返し測定した血圧が基準より高い時に高血圧と診断されます。具体的には「診察室で『最高血圧140mmHg以上あるいは最低血圧90mmHg以上』」「自宅で測定して『最高血圧135mmHg以上あるいは最低血圧85mmHg以上』」です。

高血圧ガイドライン2025

分類診察室血圧家庭血圧
収縮期血圧拡張期血圧収縮期血圧拡張期血圧
正常血圧<120 かつ <80<115 かつ <75
正常高値血圧120-129 かつ <80115-124 かつ <75
高値血圧130-139 かつ/または 80-89125-134 かつ/または 75-84
I度高血圧140-159 かつ/または 90-99135-144 かつ/または 85-89
II度高血圧160-179 かつ/または 100-109145-159 かつ/または 90-99
III度高血圧≧180 かつ/または ≧110≧160 かつ/または ≧100
(孤立性)収縮期高血圧≧140 かつ <90≧135 かつ <85

2025年の高血圧管理・治療ガイドラインにおいて、高血圧の診断基準は従来通りでした。

一方、今回の改訂の変更点での注目点として「すべての成人高血圧患者の目標値が統一された」点です。
これまで年齢や基礎疾患で分かれていた分類が、年齢や合併症に関わらず

  • 診察室血圧:130/80 mmHg未満
  • 家庭血圧:125/75 mmHg未満

とシンプルな基準に変更されました。

もう1つの注目点として75歳以上の高齢者については、ADL(Activity of Daily Lving: 日常活動動作)によって血圧目標が変わる、という点です。
75歳以上の高齢者の「ADL」(Activity of Daily Living: 日常生活動作)によって、降圧目標が変わってくるということです。ADLとは、人が日常生活を送るために必要な最低限の基本的な動作のこと。具体的には、

カテゴリーどんな人か降圧目標
カテゴリー1自力で外来通院可能なADLが保たれた方130/80 mmHg未満
カテゴリー2外来通院に介助が必要な手段的ADLが低下した方収縮期血圧 140 mmHg 未満
カテゴリー3外来通院が困難となった基本的ADLが低下した方収縮期血圧 150 mmHg 未満
カテゴリー4エンド・オブ・ライフの方個別判断 (目安は 140~ 160 mmHg)

※基本的ADL:日常生活を送るために必須の基本的な動作(例:起き上がり、移乗、移動、食事、更衣、排泄、入浴、整容、洗顔など)
※手段的ADL:日常生活を送る上でより複雑で高次の判断力と労力を必要とする活動。(例:買い物、食事の準備、家事(掃除・洗濯)、服薬管理、金銭管理、交通機関の利用、電話対応など)

そもそもなぜ高血圧を治療するかというと、将来の心疾患や脳血管疾患を予防するというためです。ADLが低下している高齢者の方については、予防や将来的なリスクよりも、今後の人生をいかに有意義に過ごしていくか、という点が重要視される様になったということ点で大きな変更であったと思います。

(参照:「高血圧管理・治療ガイドライン2025」(JSH2025))

高血圧の原因

高血圧の多くは「本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)」と呼ばれるタイプです。これは、特定の病気が原因ではなく、体質や生活習慣が重なり合って血圧が上がる状態を指します。日本人の高血圧の大部分はこの本態性高血圧にあたり、塩分の摂りすぎや喫煙・飲酒、運動不足、ストレスなどが関係しています。特に食塩は血圧に大きく影響し、日本人の食文化ではどうしても摂取量が多くなりやすいため注意が必要です。

体質や遺伝的な要素も見逃せません。家族に高血圧の方がいると、自分も血圧が上がりやすい傾向があります。そこに肥満や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が加わると、血管への負担がさらに増し、動脈硬化の進行を早めてしまいます。

一方で、全ての高血圧が本態性というわけではありません。原因となる病気が隠れている「二次性高血圧」というタイプもあります。代表的なものには、睡眠時無呼吸症候群や副腎ホルモンの異常(原発性アルドステロン症やクッシング症候群)、甲状腺の病気、腎臓や腎血管の異常などがあります。この場合は、原因となる病気を治療することが血圧の改善に直結します。

このように、高血圧は一つの原因で説明できるものではなく、体質、生活習慣、そして時には隠れた病気まで、多様な要因が関わっています。症状がなくても血圧はじわじわと上がり続けることがあり、放っておくと将来的に脳卒中や心筋梗塞といった大きな病気につながります。定期的に血圧を測り、少しでも不安を感じたら早めにご相談いただくことをおすすめします。

食事療法

高血圧と食事療法

血圧が高めと言われると、まず「塩分を減らさなければ」と考える方が多いのではないでしょうか。確かに塩分制限は治療の基本ですが、それだけでは十分ではありません。実際には、塩分以外の食習慣や食品も高血圧を悪化させる要因になります。ここでは、高血圧の方が特に注意すべき食事のポイントと、その代替方法についてご説明します。

1. 塩分の多い食品

インスタント麺やカップラーメン、漬物や梅干し、ハム・ソーセージ・ベーコンといった加工肉、さらにはスナック菓子や外食の丼物・ラーメンなどは、想像以上に塩分を含んでいます。場合によっては、これらを1食とるだけで一日の推奨量(6g未満)を超えてしまうこともあります【日本高血圧学会ガイドライン2025】。特に「汁物のスープ」や「調味料のかけすぎ」は盲点です。
なお、塩分6gとはどのくらいかというと、

・食塩小さじ1杯で約6g
・醤油大さじ1杯で約2.6g
・みそ大さじ1杯で約2.3g

に相当します。つまり、しょうゆを2杯かけたり、味噌汁を2杯飲んだりすると、すぐに目標値を超えてしまうのです。

工夫の例としては、スープを残す、減塩しょうゆや減塩みそを活用する、香辛料やレモン汁で味を補うといった方法が効果的です。味つけに慣れてくると、薄味でも十分においしく感じられるようになります。

2. 飲み物やアルコール飲料

清涼飲料水に多く含まれる糖分は、肥満や糖尿病を引き起こし、それが高血圧を悪化させる原因となります。またアルコールも注意が必要です。少量であれば一時的に血流を改善する効果があるとされますが、習慣的に飲み続けると血圧を上昇させてしまいます。特に糖質を多く含むビールや日本酒はリスクが高いため注意が必要です。
厚生労働省は、アルコール摂取の上限を「1日20g未満」としています。これは男性であれば 日本酒1合(約180ml)、ビール中瓶1本(500ml)、焼酎25度なら半合(100ml)、ワインなら2杯(200ml) に相当します。女性の場合は代謝が遅いため、この半分程度が目安とされ、日本酒0.5合、ビール小瓶1本、焼酎50ml、ワイングラス1杯ほどが望ましいと考えられています。
つまり、男女ともに「毎日たくさん飲む」ことは避け、飲む場合も量を決めて楽しむことが大切です。

3. 脂質の多い食品

揚げ物や菓子パン、ケーキ、スナック菓子などに多く含まれる飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は、動脈硬化を進め血圧を上げる原因になります。
おすすめの工夫としては、揚げ物を週2回以下に抑えること、バターではなくオリーブオイルを使うこと、そしておやつをナッツや果物に置き換えることです。

4. 食べ過ぎると・・・

高血圧の背景には、塩分や脂質のとりすぎだけでなく「体重増加そのもの」が深く関わっています。体重が1kg減ると、収縮期血圧が平均で1mmHgほど下がるとされており、減量は非常に効果的です。体格の指標としてよく使われるのが BMI(Body Mass Index) です。計算方法はとても簡単で、

BMI = 体重(kg) ÷ {身長(m) × 身長(m)}


で求めることができます。
たとえば、身長170cm(1.70m)、体重70kgの方の場合、

BMI = 70 ÷ (1.70 × 1.70) = 約24.2

となり、基準内の「標準体重」にあたります。日本では、

BMI 18.5以上25未満:標準体重
25以上:肥満

とされており、高血圧の方は 25未満を目標とするとよいでしょう。

毎日の食事は「腹八分目」を意識し、少しずつ減量していくことが、血圧コントロールにつながります。

5. 血圧に注意した食事の習慣

米国で提唱されている「DASH食」は、高血圧予防・改善に有効であることが研究で示されています。具体的には、野菜や果物を豊富にとり、魚・大豆・低脂肪乳製品を取り入れつつ、塩分や飽和脂肪酸を減らすことを重視します。カリウム・カルシウム・マグネシウムをしっかり摂取することも効果的です。日本では、この考え方を取り入れた「減塩和食」が実践しやすい形として推奨されています。

6. 当院での取り組み

当院では血圧測定だけでなく、食事内容の確認や生活習慣のアドバイスも行っています。必要に応じて食塩摂取量の推定や血液検査を行い、減塩だけでなく「バランスの取れた食事」を提案しています。一人ひとりのライフスタイルに合わせた継続可能な方法をご案内しています。「控えること」だけでなく「どう置き換えるか」を重視することで、無理のない食習慣の改善をサポートしています。

高血圧における食事療法のまとめ

高血圧の食事療法では、塩分制限が出発点ですが、それに加えて糖分やアルコール、脂質のとりすぎを避け、食べすぎを防いで適正体重を維持することが不可欠です。「食べてはいけない」ではなく、「代わりに何を選ぶか」と考えることで、長く続けられる治療につながります。

参考文献
日本高血圧学会. 『高血圧治療ガイドライン2025』.
Appel LJ, et al. A clinical trial of the effects of dietary patterns on blood pressure. N Engl J Med. 1997. (DASH trial)

運動療法

血圧と運動

「薬を使わずに血圧を下げたい」「健康診断で高血圧を指摘されたけれど、生活をどう変えればいいのだろう?」そんな疑問に答える方法のひとつが運動療法です。
日本高血圧学会のガイドライン2025でも、運動は治療の基本に位置づけられており、誰もが取り入れるべき重要な戦略とされています。ここでは、なぜ運動が血圧を下げるのか、どのような運動が効果的なのか、そして安全に続けるための工夫を解説します。

血圧と運動って本当に関係あるの?

定期的な運動は、いくつかの仕組みを通じて血圧を安定させます。まず、有酸素運動によって血管の柔軟性が高まり、血液が流れやすくなります。血管が広がりやすくなることで末梢血管の抵抗が下がり、自然と血圧がコントロールされます。
また、運動は自律神経のバランスを整え、交感神経の過剰な働きを抑え、副交感神経を優位にする効果があります。これにより緊張状態が和らぎ、血圧の安定につながります。
さらに、体重管理にも直結します。体重が1kg減ると収縮期血圧が約1mmHg下がるとされており、肥満改善を通じて大きな降圧効果が期待できます。加えて、運動はインスリン抵抗性を改善し、糖代謝を良くすることで血管への負担を軽減します。

どんな運動がいいの?

高血圧の改善には「有酸素運動」「筋力トレーニング」「柔軟・バランス運動」を組み合わせることが有効とされています。

高血圧に効果的な運動の種類

有酸素運動

ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などが代表的です。
目安は1日30分以上を週5回、合計150分以上。
「息が少し弾むけれど会話はできる」程度の中等度強度が理想的です。研究では、収縮期血圧を平均5〜7mmHg下げる効果が報告されています。

筋力トレーニング

近年は筋トレも降圧効果があることが明らかになってきました。腕立て伏せやスクワット、ゴムバンドを使った運動など、自宅でできるもので十分です。推奨は週2〜3回、1セット10〜15回を全身バランスよく。有酸素運動と組み合わせることで、より効果的に血圧が下がります。

柔軟・バランス運動

ストレッチ、ヨガ、太極拳などは血圧を直接下げるエビデンスは限られますが、ストレス軽減や転倒予防に役立ちます。特に中高年では取り入れる価値があります。

運動をする際の注意点

いきなり激しい運動を始めると心臓や血管に負担をかけるため、まずはウォーキングからスタートするのが安心です。特に血圧が非常に高い(180/110mmHg以上)の場合は、医師の許可が出るまで強い運動は控えるべきです。
また、心臓病や腎臓病、整形外科的な持病をお持ちの方は、必ず医師と相談してから始めるようにしましょう。

日常生活に取り入れる工夫

「特別な運動の時間」を作るのではなく、生活の中で体を動かす工夫をするのも効果的です。例えば、通勤時に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使う、テレビを見ながらストレッチをする、買い物帰りに荷物を持って歩くなど、小さな工夫の積み重ねが運動習慣につながります。

当院での運動療法サポート

当院では、日本高血圧学会の最新ガイドラインに沿って、一人ひとりに合った運動療法プランをご提案しています。心臓や腎臓の状態を確認したうえで、無理のない方法を一緒に考え、必要に応じて栄養指導や記録サポートも行います。
「運動が大切なのは分かっているけれど続かない」という方でも、安心して取り組めるよう、医師と一緒にプランを作ることができます。

運動は高血圧治療の第一歩であり、薬に匹敵する効果を持つといわれています。有酸素運動に筋トレを組み合わせることで降圧効果はさらに高まり、日常生活の中のちょっとした工夫でも十分に効果が期待できます。大切なのは、無理をせず続けることです。

薬物療法

これまで書いてきた食事療法や運動療法を含め、まずは生活習慣の改善は治療の基本です。ですが、改善が乏しいときはやはり薬による治療が必要になります。
「高血圧治療ガイドライン2025」では、薬物治療の進め方がより明確化されました。ここでは、患者さんに知っていただきたい薬の種類と、治療の基本的な流れについてご紹介します。

薬物治療の基本方針

ガイドライン2025では、「生活習慣改善+段階的な薬物治療」が基本とされています。まずは1種類の薬から始め、効果が不十分であれば2種類に、さらに必要であれば3種類以上の併用や新しい薬剤の導入へと進めていきます。
目標とする血圧値は、

診察室で測定した場合:130/80mmHg未満
自宅で測定した場合:125/75mmHg未満

と示されており、より早期にこの目標へ到達することが推奨されています。

高血圧治療薬の主な種類

カルシウム拮抗薬(CCB)

血管を広げて血流を良くし、血圧を下げます。日本人で最も多く使われる薬の一つで、アムロジピンなどが代表的です。副作用として顔のほてりや足のむくみが出ることがあります。

レニン-アンジオテンシン系阻害薬(ARB・ACE阻害薬)

血管を収縮させるホルモンの働きを抑える薬です。腎臓を守る作用があり、糖尿病や蛋白尿を伴う患者さんに特に有効です。ACE阻害薬では咳が出ることがあり、ARBでは高カリウム血症に注意が必要です。

利尿薬

体の余分な水分や塩分を尿として排出し、血圧を下げます。高齢者や心不全を合併している方に有効ですが、低カリウム血症や尿酸の上昇に注意が必要です。

β遮断薬

心拍数を抑え、心臓の負担を軽減します。狭心症や心筋梗塞後の方に特に有効です。ただし、気管支喘息や徐脈がある場合には使用が難しいことがあります。

併用療法 ― 早期に2剤併用へ

単剤で十分な効果が得られない場合、ガイドラインでは早めに2種類の薬を組み合わせることを推奨しています。代表的な組み合わせは、

・CCB+ARB
・ARB+利尿薬
・CCB+利尿薬

複数の薬を少量ずつ組み合わせることで、副作用を抑えながら効果的に血圧を下げることができます。

治療抵抗性高血圧への対応

生活習慣改善と3剤併用でも血圧が下がらない場合、「治療抵抗性高血圧」と呼ばれます。この場合の追加選択肢として、

MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
スピロノラクトンやエプレレノンが代表で、アルドステロンというホルモンの作用を抑えます。原発性アルドステロン症や抵抗性高血圧で特に有効です。

・ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)
サクビトリル/バルサルタンという薬で、RAAS抑制と利尿ペプチド作用を併せ持ちます。本来は心不全の薬ですが、2025年ガイドラインでは高血圧への応用についても記載されています。

いずれも第一選択薬ではなく、標準的な薬で十分な効果が得られない場合に導入される「次のステップ」の薬です。

薬の副作用と注意点

高血圧の薬は種類が多い分、副作用もそれぞれ異なります。立ちくらみや低血圧は複数の薬を併用しているときに起こりやすく、腎機能障害や電解質異常はARB・ACE阻害薬・MRAを使用している場合に注意が必要です。高齢者では過度の降圧が転倒や認知機能低下につながる可能性もあるため、目標血圧は個別に調整します。

また、副作用の観点やその他の生活習慣病の合併の有無を確認するためにも、定期的な血液検査で体の状態を把握しておくことが重要になります。

当院での薬物治療

当院では、まず生活習慣の改善を徹底したうえで必要に応じて薬を導入しています。薬物治療はガイドラインに沿った「ステップ方式」で進め、副作用や合併症リスクを常に確認しながら調整します。
高血圧治療の柱は、生活習慣の改善と薬物療法の両立です。基本薬はカルシウム拮抗薬・ARB/ACE阻害薬・利尿薬・β遮断薬であり、必要に応じて2剤併用、さらにはMRAやARNIなどを追加します。副作用や合併症に配慮しながら、一人ひとりに合わせた個別化治療を行うことが大切です。

参考文献
日本高血圧学会. 『高血圧治療ガイドライン2025』

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